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小鳥と戯れる至福の時間


小鳥(ヤマガラ)と戯れる至福の時間
熊野の山に暮すようになり、好きな小鳥たちが来てくれるようにと、ひまわりの種や麻の実などを山小屋の近くに置いたり、バードヒィーダーに入れて軒下に吊したりしました。 しかし、最初の数週間は何も来てくれませんでした。それでも、雨で濡れて傷んだ餌をこまめに取り替えて根気良く小鳥たちが来てくれるのを待ちました。やがて、知らないうちに、どうやら小鳥が来て餌を食べていることがわかりました。そのうちに僕が近くにいる時にも、飛んできて餌を啄むことが多くなってきました。日に日に慣れてきて、僕が直ぐ近くにいても飛んで来ては餌を啄み始めました。
手から餌を貰うヤマガラ
そんなある日夢を見ました。僕は小鳥が好きで餌をあげたりしている。いつか小鳥が僕の手から直接餌を啄み、同じ山に住む仲間として過ごせたらと心から望んでいる。しかし小鳥たちは僕が近ずくと飛び立って逃げてしまう。ここまでは現実の世界です。それで夢というのは小鳥が一羽飛んで来て、いつものように餌を啄み始めました。僕は静かに邪魔をしないように無視するようにしていました。ところが小鳥は僕に興味があるのか、いつもと違ってピョンピョンと近づいてきました。そのうちに僕の肩に飛び乗り、そこが自分の指定席のように馴染んでしまうのでした。夢の中で僕はとても優しい気持ちに包まれたようになりました。
その夢を見てからは、小鳥たちと仲良しになるのは早かったです。手の平に餌を乗せて差し出すと直ぐに飛んで来るようになり、 常に二十羽近くの山雀が山小屋の周りにいることも判りました。ヤマガラやヒガラ、エナガ、この地方で見られるほとんどの小鳥が山小屋の近くに飛んで来ましたが、懐いて飛んで来るのはヤマガラでした。初秋に餌を置だしてから、初冬の頃には、こんなにも野鳥が懐くものだろうかと思うほどになっていました。僕が山小屋の中にいると、窓のところにとまって、ずっとこちらを見ています。外に出ると直ぐに飛んできては頭や肩にとまって嬉しそうに甘えたようにチィーチィーチィーと身体を揺すって鳴く様を見ると、可愛くて可愛くて、つい大好物の落花生を買ってきてはあげてしまいます。手の平の餌を啄む時に、小鳥のお腹を指で撫でると、ふわふわとして気持がよいのです。それを友人に言うと小鳥に対するセクハラだと笑います。
山小屋の周囲は植林されていた山林でしたが、20年間、手を入れていなかった為に、自然本来の雑木 が植林された檜の間に生えていました。これ幸いと檜を切り、雑木林に戻す作業をしています。そんな作業中の出来事です。木もれ日の中、木々の間を通 る爽やかな風に涼を感じて木にもたれて一休みしていました。そうすると、チーチーという甘えた鳴き声がするので目で追うと小鳥が僕の傍にいるのです。餌を持っていなくても手を出せば手に止まり嬉しそうに頭を振ってチーチーとさえずるのです。その時には、本来、すべての動物は人間と仲良くしたいのではないかと思ってしまいました。木々や 小鳥たちを育む自然というものに、心から神のあたたかい心を感じてしまいました。
手乗りヤマガラ
小鳥たちと接するようになり、いろんなことを学びました。1羽1羽、驚くほど、それぞれが個性を持っていました。仕種も違えば、性格も違いました。積極的な小鳥もいれば、引っ込み思案な小鳥、手の平の餌を気に入るまでくわえては下に落とす小鳥や、いじわるな小鳥などいました。そんな中で特別 よく懐いて可愛い小鳥がいました。他の小鳥が餌を求めて手の平にくれば、それを譲って肩にちょこんととまっては待つ、ひかえめで、つつましくて、仕種がなんとも優しい小鳥でした。その小鳥が首をかしいで斜めにすくうように餌をくわえたり、おしりをつきだして前屈みになって飛び立っていく姿はとても愛らしくて、思わず篭の中に入れて飼ってやろうかと思うほどでした。小鳥は皆、可愛いのですが、やはり 相性や波動が合う合わないがあるものだと感じると、小さな小鳥の命も、人間と同じようにかけがいのないものだと心底思い知らされました。 一年経ち、再び小鳥が懐いて飛んでくるようになりました。しかし、あの一番懐いていた、可愛い小鳥の姿がありませんでした。もしかしたら、僕があまりにも人間に慣れさせた為に、誰かにかどわかされたのではないだろうか、それとも自然淘汰されて死んじゃったのではないかとか思い、とても悲しい思いをしました。山小屋の回りで、僕がいれば、殆どの人に小鳥は懐いて飛んではきましたが、僕がいない時は、近くまで飛んできても手には乗らないと、地元の人が云っていたので、たぶん、自然淘汰されたのだと、都合の良いように思うようにしました。もし本当に 自然淘汰で、あの可愛くて優しい小鳥が生き残れなかったのであれば、そんな自然というものを考えてしまいました。人も自然もすべての存在が、ひとつ高い次元に進化して、そういう弱い存在をも暖かく育むようになって欲しいものだと、心から願いました。
とても懐いていたヤマガラも、春になり卵を暖めだすと、僕のことなど見向きもしなくなります。そんなある日、巣箱で山雀が変な鳴き方をするので、ロフトの窓から外に顔を出して見たら今度は物干し竿に止まって僕の方を見て何か訴えるように鳴き続けるのです。何だろうと思い外に出て、あたりを見渡したら巣箱の近くまでヘビが壁をよじ登ってきていたのでした。早速棒を探してヘビを追っ払ってやりました。しかし、それでも何かを探しているようにあたりを見渡して鳴くので、ひな鳥か卵でも取られているのかと思いヘビを再び探し出して見てみましたが別 段何か飲み込んだ様子はありませんでした。ヤマガラはすぐ近くを飛びながら僕がヘビを追い払うのを真剣なまなだしで見ていました。そんな感じがヤマガラからひしひしと伝わってきのでした。なんだか最近僕に懐いていないと思っていましたが、僕のことを頼りにしているのだと思うとなんだか嬉しかったです。
お昼前に巣箱を覗いたら6羽いたヒナが3羽しかいなくて、どうしたのだろうと心配になってその辺を探していたら巣箱の真下の地面 でピーピーなくヒナを1羽見つけた。あれっ、さっきはいなかったのにと思い、思案したあげく、あまりにも頼りなさげなので巣箱に戻すことにした。すると巣箱には2羽しかなくて巣箱の下で見つけたヒナは残っていた3羽のうちの1羽が巣立とうとして地面 に落ちたことが分った。地面で見つけたヒナを巣箱に戻してからしばらくすると親鳥が現れて、巣箱の廻りや地面 を点検するように飛び回ってから巣箱の近くでヒナを呼ぶように鳴き始めた。その声を聞いてヒナが1羽ずつ巣箱から飛び立ち親鳥に誘導 されて3羽とも小屋の裏山に消えていった。 問題はそこからであった。昼過ぎにロフトで電話をしていたら、どこからかヒナがロフトの窓めがけて飛んできて網戸にぶつかって下に落ちてしまった。慌てて電話を切ってヒナが怪我をしていないかみて、とりあえず部屋の中に入れて様子をみた。たぶんそのヒナは僕が巣箱を覗いている時にピーちゃんと声をかけると1羽だけピーと鳴いて反応したヒナではないかと思う。もしかしたら電話で話す声に反応して飛んできたのかも知れない。どうやら怪我もなく大丈夫そうなのだが、このまま山に放そうか、それとも飼ってあげた方がヒナの為なのだろうかと散々思案したあげく再び巣箱に戻すことにした。巣箱に戻してからしばらく気になってどうするのか見てると、やはり巣立って行きたいのか、巣箱を飛びだして裏山の方へ飛んでいった。
飛んでいったのは良いものの、小鳥の好きな僕はなんだか情が移ってしまい気になってしょうがない。無事に育ってくれるのだろうかとか、蛇やカラス、ことによってはタヌキが食べてしまわないだろうかと心配で目が離せなかった。こういうのもバードウォッチングというのだろうか?しばらくハラハラしながら見ていると親鳥がそのヒナに餌をあげて、やはり鳴きながら誘導して山の中に消えていった。現実は6羽のヒナのうち無事に育ってくれるのは3羽もいないのかも知れない。無事に育ってまた会えることを心から祈った。 今でもこのヒナは飼ってあげた方が良かったのではと切ない思いがします。
巣立とうとするヤマガラのヒナ鳥
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